名古屋大学過去問

 

 

1992

問題IV
昨今の株式市場の変動はしばしば1929年10月の株式大暴落と比せられる。それに始まるいわゆる世界恐慌は,第二次世界大戦を引き起こす前提となると同時に,工業国では今日払たちが常識としている兌換の保証のない中央銀行券や,社会保障制度などを普及させる契機ともなった。それではアジア,アフリカ,ラテン・アメリカの非工業国に対して,世界恐慌はどのような影響を及ぼしたのであろうか。
次の語句ならびにグラフを参考にしながら300字以内で述べなさい。
〔語句〕
オタワ会議 ブロック経済 満州事変 インド連邦 善隣外交 軍事政権 モノカルチャー経済 力ルデナス大統領
〔グラフ〕

1993

問題IV
この1世紀余の間,バルカン半島から中東にかけての地域では紛争が相継ぎ,まさしく「世界の火薬庫」との比喩があてはまる状況にあった。多民族多宗教の混在するこの地域はともにオスマγトルコ帝国の支配下にあった歴史をもつ。ある意味で今日まで続く紛争は,この旧帝国を列強諸国が自己の権益拡大の立場から解体させてきたことの負の遺産といえる。この地域を不安定にさせた歴史的要因について,次の語句や資料などを参考にしながら300字以内で論述しなさい。

〔語句〕
イェニチェリ
ミレット Millet(宗派別自治体)
カピチュレーション
ボスニア・ヘルツェゴビナ併合(1908年)
サイクス・ピコ協定
フセイン・マクマホン協定
シオニズム

〔資料〕
旧ユーゴスラビア各共和国の民族構成
スロベニア(スロベニア人91%)
クロアチア(クロアチア人78%,セルビア人12%)
セルビア(セルビア人66%,アルバニア人17%,モンテネグロ人6%)
ボスニア・ヘルツェゴビナ(ムスリム人44%,セルビア人31%,クロアチア人18%)
モンテネグロ(モンテネグロ人62%,ムスリム人15%)
マケドニア(マケドニア人65%,アルバニア人21%)

1994

問題IV
第二次大戦終了からやがて半世紀、戦後はもはや歴史として語らなければならない。戦後の国際情勢は,米ソ関係の緊張と緩和を基調として展開したが,もう一つの政治的・軍事的極としての中国の存在が,米ソの関係にも微妙な影をおとしていたといえる。中国とソ連との関係がどのように変化していったのか,国際情勢の動向もふまえ,次の語句や資料を参考にしながら,300字以内で説明しなさい。
〔語句〕
北京条約(1860年) カラハン宣言 中ソ友好同盟相互援助条約 スターリン批判 大躍進 部分的核実験停止条約 ゴルバチョフ訪中

1995

問題IV
16世紀から18世紀にかけてのいわゆる絶対主義の時代,ヨーロッパにおける諸国間の国際関係は王朝の利害を軸に展開し,勢力均衡の維持のため、しばしば戦争が引き起こされた。このヨーロッパでの国際関係のうち,16世紀初頭から18世紀半ばまでのスペイン,フランス,オーストリアの3国をめぐる動向について,次の語句を参考にしながら,300字以内で論述しなさい。
〔語句〕
ハプスブルク家 ブルボン家 カルロス1世 ルイ14世 三十年戦争 ユトレヒト条約 外文革命

1996

問題IV
近代の黒人奴隷制は,ヨーロッパ諸国のつくりあげた新大陸の植民地において大規模なかたちで出現し,さらに奴隷制のその後の展開も,ヨーロッパ諸国の政治・経済状況と深く関わっていた。この奴隷制および奴隷貿易をめぐる17世紀から19世紀までのイギリスとフランスの動向について,次の語句とグラフを参考にしながら,300字以内で論述しなさい。
〔語句〕
三角貿易 砂糖 産業革命 フランス革命 ナポレオン 二月革命 奴隷制廃止運動

1997

問題IV
鉄製武器や火薬の発明と普及が,それぞれに,さまざまな対立を誘発させながら,世界の歴史を変える触媒の役割を果たしたと,考えることが妥当であるのであれば,今世紀半ばからの核兵器の開発は,それらと同様に,あるいはそれ以上に,人類のあゆみに大きな影響を及ぼしてきているといってよいだろう。
この半世紀あまりの核兵器開発が,国際社会にどのような動きを生じさせてきたのか,次の語句などを参考にしながら,350字以内で論述しなさい。
パグウォッシュ会議 キューバ危機 部分的核実験停止条約 核拡散防止条約 インドの核開発 INF(中距離核戦力)全廃条約調印 CTBT(包括的核実験禁止条約)

1998

問題IV
今世紀の前半には,二つの世界戦争がおこなわれた。第二次世界大戦は、第一次世界大戦をはるかにしのぐ破壊戦争となり,人的犠牲も大きく膨らんだ。犠牲者の厳密な統計数値を得ることは困難であるが一例として下記〔資料〕のような推計値も示されている。
第一次世界大戦による死者の合計は,おおよそ軍人850万人および市民50万人と見積もられている。これと比べ第二次世界大戦では,とくに市民の犠牲が何十倍にも増加し,際立っている。その原因はどこにあるのか,次の語句や資料などを参考にしながら350字以内で論述しなさい。
〔語句〕
総力戦 全体主義 アウシュビッツ 三光政策 戦略爆撃 原子爆弾
〔資料〕〈第二次世界大戦における主要諸国の死者の推計値〉

1999

問題IV
古代ギリシア世界では,オリュンピア,デルフィ,ネメア,イストミアなどの国際的な聖域で行われる祭典,とりわけそこで催される競技会が重要な社会的意義を持っていた。以下の史料を参考としながら,その意義について,350字以内で説明しなさい。その際,次の語句を必ず一度は用いること。
市民 自由 競争 法律 名誉 情報

(ギリシア軍からペルシア側に脱走してきた者たちは,ペルシア人の質問に答えて)ギリシア人はいまオリュンピア祭を祝っているところで,体育や馬の競技を観覧している,と答えた(紀元前480年)。競技の褒賞が金品ではなくオリーブの冠だときいたペルシア人のひとりは,こう言った。「ああマルドニオス(ペルシアの将軍)よ,そなたはわれらを何たる人間と戦わせようとしてくれたことか。金品ならぬ名誉を賭けて競技を行う人間とは」
(ヘロドトス『歴史』8巻26章)

ここにアテネ市民でオリュンピア競技に優勝したキュロンという男があった。思い上がりの未に,独裁を夢見て,同年輩の者たちを語らい,アクロポリスの占領を企てたが,占領に失敗して神像にすがり命乞いをしようとした。
(ヘロドトス『歴史』5巻71章)

(オリュンピアの評議会場にあるゼウス像の)もとで,出場選手たちは「オリュンピア祭典競技会において,決してかんさくきけい奸策詭計をろう弄することはありません」と誓約するのが仕来りである。
(パウサニアス『ギリシア案内記』5巻24章)

(ローマ側が)これらのことを決定する頃には,イストミア祭が近づいていたので(紀元前196年),各地から事態の成りゆきに関心のある著名人が集まり,祭典のあいだにも(ローマの動きに関する)さまざまなうわさ噂が交わされていた…。多くの者が競技を観戦するために競技場に集まると,伝令が進み出てラッパの響きによって群衆を静め,(ローマ側からの)布告を読み上げた。
(ポリュビオス『歴史』18巻46章)

2000

問題IV
近代という時代は,これを西欧から見るならば,自らの地球規模における発展の時代,非西欧世界を征服していく過程としてとらえることができるだろう。すなわち非西欧世界の大部分から言えば,近代とは自らが西欧に征服される過程,またその支配に対する抵抗の時代と位置づけられることになる。こうした非西欧型の近代は,中国においてどのように展開したのか,下記の語句を参考にしつつ,350字以内で論述しなさい。
五四運動 アヘン戦争 南京国民政府 日中戦争 アロー戦争 義和団

2001

問題IV
引用文1,2,3はいずれも西洋人の見た東洋社会の代表的なイメージを示している。このようなイメージが生じたのは,西洋の歴史にも存在した専制君主政の諸例と東洋の専制君主体制とが大きく異なっていたためである。どのような意味で異なるのか,350字以内で論じなさい。

引用文1 (クセルクセスと,ペルシアに亡命していた元スパルタ王デマラトスの問答)(クセルクセス)「(スパルタ人が)一人の指揮者の采配の下にあるのでなく,ことごとくが一様に自由であるとするならば,どうしてこれほどの大軍に向って対抗し得ようか。……一人の統率下にあれば,指揮官を恐れる心から実力以上の力も出そうし,鞭に脅かされて寡勢を顧みず大軍に向かって突撃もしよう。しかしながら自由に放任しておけば,そのいずれもするはずがなかろう。」(デマラトス)「スパルタ人は……自由であるとはいえ,いかなる点においても自由であると申すのではございません。彼は法(ノモス)と申す主君を戴いておりまして,かれらがこれを怖れることは,殿(クセルクセス)の御家来が殿を怖れるどころではないのでございます。」(ヘロドトス『歴史』,松平千秋訳)

引用文2 三種類の政体がある。共和政,君主政,専制政がこれである。……共和政体の本性は,人民全体,または特定の諸家族がその主権をもつことであり,君主政体のそれは,君主がその主権をもつけれども,それを一定の法にしたがって行使することであり,専制政体のそれは,唯一者がその意志と気まぐれによって統治することである。……アジアでは権力はつねに専制的であらざるをえぬ。……ヨーロッパでは……法による統治が国家の維持と相容れぬものでな(い)。(モンテスキュー『法の精神』,根岸国孝訳)

引用文3 東洋人は一人の者が自由であることを知っているだけであり,これに対してギリシア人とローマ人とは少数の者が自由であることを知っていたにすぎなかったが,われわれはすべての人間が本来自由であること,すなわち人間が人間として自由であるということを知っている。(ヘーゲル『歴史哲学』,武市健人訳)

2002

問題IV
世界史上,イギリスで最初に起こった産業革命(工業化)は,人類がいまだ経験したことのない新しい時代の幕開けとなった。しかしそこには明るい面と暗い面の双方が見出せる。下に掲げる統計資料(資料は省略)を参考にしながら,産業革命がイギリスにもたらした明と暗の両面について,19世紀中頃までを視野に入れて,350字以内で論述しなさい。

2003

問題IV
下の表「世界の人口」は,過去2世紀間の世界における人口推移を地域別に示しています。表の数値は,ある外国の歴史教科書に主に依拠しています。大規模な人口統計には固有の困難さがあり,つねに一定の誤差が含まれます。とはいえ,下の表から過去2世紀間の世界の人口推移について,基礎的な概観を得ることができます。そこで,19世紀と20世紀の世界の人口について,どの地域を中心に最も強力な人口増加が進んだのか,その要因は何であったのか。19世紀と20世紀との比較を試みながら,過去2世紀の世界における人口動向の特徴と問題点について,整理して350字以内で論じなさい。

表世界の人口」(単位は100万人)
アジア ヨーロッパ アフリカ 北アメリカ 中南米 オセアニア
1800 602 187 90 6 19 2
1850 749 266 93 26 33 2
1900 937 401 120 81 63 6
1950 1360 574 199 168 162 13
2000 3672 727 794 314 519 31

2004

問題IV
前508年に,ギリシアのアテネではクレイステネスの改革によって民主政の礎が据えられたが,伝承によれば,ローマでもほぼ同じ頃(伝承では前509年)に王政が廃されて共和政への道が拓かれた。アテネの民主政とローマの共和政は,ともに市民社会を実現するためのモデルを近代以降の世界に提示することになるが,両者のあいだには相違点もまた少なくない。両者の類似と相違がアテネとローマそれぞれの歴史的展開にどのような影響を与えることになったのか,下記のキーワードを参考にしながら(必ずしも,これらのすべてに言及する必要はない)350字以内で論述しなさい。
元老院 民会 貴族(パトリキ) 陶片追放 市民権 執政官(コンスル) 帝政 抽選 

2005

問題IV
1929年10月24日,ニューヨークの株式市場の大暴落で始まった恐慌は,アメリカから世界各国へ波及した。だがこの世界恐慌への対応は,植民地や資源・権益を豊富に持つ国(いわゆる「持てる国」)と,そうでない国(いわゆる「持たざる国」)とのあいだで大きな違いがあった。では,イギリス,ドイツ,イタリアはそれぞれどのように世界恐慌に対応したのか,次に掲げる統計資料(省略)を参考にしながら350字以内で論述しなさい。 

2006

問題IV
ある特定の地域の歴史を通観する時,大きく時代が転換する時期をいくつか見いだすことができる。中国の歴史においては,前漢王朝の武帝の時代を一つの転換期と見なす見方がある。この武帝の時代はどのような意味で転換期と見なすことができるのか,下記の語句を参考にしつつ,統治の在り方の側面と社会・経済の側面とを関係づけながら350字以内(句読点を含む)で論述しなさい。

郡国制 一君万民 対外膨張策 塩・鉄・酒の専売 郷挙里選 九品中正

2007

問題IV
19世紀の後半から現在に至るまで,大規模な戦争に伴う惨禍の拡大に直面し,人道と平和を求める努力がさまざまな形で積み重ねられてきました。その軌跡は,人道と平和への国際連携や,国際条約と国際組織の歴史にたどることができます。たしかに,戦火は現在も絶えることがありません。しかし,それゆえにこそ過去の人道的努力を学習し継承することは,いっそう重要なことがらとなっています。下記の語句は,この国際的努力の一端を示すものです。これらの語句すべてを年代順に用いて,人道と平和への努力の軌跡を,主要な人物名にも触れつつ350字以内(句読点を含む)で整理して述べなさい。
国際赤十字社 国際連合 国際連盟 中距離核戦力全廃条約 パグウォッシュ会議

2008

問題IV
農業社会から工業社会へ,18世紀後半のイギリスに始まる工業化の進行によって,人々の生活や社会の構造は一変した。大規模な工場制の普及や交通技術の進歩により,たしかに生産力は大きく上昇し,人々は古い生活にしばられない移動の自由を手にした。しかし,他方,大工場の労働現場や大都会の暮らしのなかで,新たな苦痛や困難,貧困の問題にも直面した。そうした,工業化や都市化にともなう新たな問題にたいし,それを克服する努力も積み重ねられてきた。欧米諸国を例に,以下の語句をその番号順に用いて,この努力の歴史を350字以内で整理して述べなさい。

(1)工場法
(2)ビスマルクの社会政策
(3)ニューディール
(4)「ゆりかごから墓場まで」
(5)国際労働機関(ILO)

2009

問題IV
人類の歴史は,移動や移住の歴史でもある。とりわけ大航海時代における「新大陸」と「旧大陸」の出会いにより,その展開は大洋を越えてグローバルな規模にまで拡大した。むろん人口移動の中には自発的なもののみならず,強制されたものもあった。このような移民などの様々な人口移動について,「新大陸」と「旧大陸」の相互連関を中心に,下の語句や表・グラフ(省略)を参考にして350字以内で論述しなさい。

プランテーション ゴールドラッシュ ジャガイモ 移民法

2010

問題IV
476年に西ローマ帝国がほろびた後,西ヨーロッパではフランク王国が中世世界の形成に大きな役割を果たした。そして10〜11世紀に西ヨーロッパ中世世界の基本的な骨組みとなる封建社会が成立する。西ヨーロッパ中世世界に特有のしくみと言われる封建社会の成立過程を,同じ頃(7〜10世紀)のビザンツ帝国の社会の特徴と比較しながら,350字以内で説明しなさい。説明に当たっては,以下の語句を参考にすること(必ずしも,これらのすべてに言及する必要はない)。

封建的主従関係 荘園 外敵の侵入 中央集権と地方分権 軍管区割(テマ制)

2011

問題IV
今日の世界を成り立たせている基本的システムは西欧の近代に起源するものであるが,その西欧の近代が確立する上で,17世紀という時期がはたした役割は大きかったであろう。イギリスの革命,また重商主義政策とそのための植民地獲得,あるいは後の産業革命や啓蒙思想の前提となる近代的世界観の確立など,17世紀は西欧による世界支配を直接に準備した時期であった。ならばこの17世紀,ユーラシア大陸の東部で,西欧とは異質の文明を持続させていた中国は,政治的,経済的,文化的にどのような状態にあったのか。そこにはどのような変化があり,あるいはなかったのか,350字以内で説明しなさい。

2012

問題IV
第一次世界大戦の終結からほぼ20年後にはじまった第二次世界大戦は,ヨーロッパを再び大規模な戦禍に巻き込んだ。この第二次世界大戦の展開について,ドイツ,フランス,ソ連(ソヴィエト社会主義共和国連邦)3国を中心に,その相互の連関に留意しながら,1939年の開戦からドイツの無条件降伏まで400字以内で論述しなさい。論述にあたっては,以下の語を参考にすること(かならずしも,これらのすべてを用いる必要はない)

ベルリン アウシュヴィッツ パリ ヴィシー スターリングラード ポーランド フィンランド  

 

 

 

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