論述問題へのアプローチ

 1.論述解答へのプロセス
 2.学習法
 3.
問題文をしっかり読もう

 4.学習上の注意点

1.論述解答へのプロセス

ここでは2000年度の京都大学第一問を例にどのようなプロセスで論述の解答を書くかを説明します。

中国では2世紀末以降、群雄割拠の時代となる。以後、統一に至るおよそ100年の歴史について、政治・社会・文化の三つの側面から、300字以内で述べよ。句読点も字数に含めよ。
(2000年度、京都大学第一問)
問題文を読んでヒントを見つける

 問題文をよく読んで、出題者のくれた解答へのヒントを読みとりましょう。
問題文を読んで問題の主題(出題者の主な要求・課題、論点など)、条件事項(主題以外の範囲や使用語句や字数制限など事務的な要求、注意・留意事項など)を確認する。また、文章内容や指定語句から解答内容に関する隠されたヒントをさがしてみよう。

・主題・条件は・・・
 主題は「2世紀末以降の100年の歴史」
 条件は「政治・社会・文化の三つの側面から」「300字以内」
 →2世紀末以降の100年の歴史を政治・社会・文化の三つの側面から書けばいいのか!!
・ヒントは・・・
 「群雄割拠」、「統一に至る」→政治面の隠れたヒントだ!
戦略を立てる

 次にヒントを元に自分は解答でどんな内容を書くかを考え、どのように表現して書くかの戦略を立てます戦略の内容は見取り図・簡単なメモで書きます。戦略を立てずに解答を書き始めると、書く内容のバランスや書く順序で大失敗する恐れがあります。この問題なら・・・

政治面 黄巾の乱→後漢滅亡(220年)→三国時代(魏・蜀・呉の「群雄割拠」)→魏が蜀を滅ぼす→司馬炎が晋建国→呉を滅ぼして晋により「統一に至る」(280年)
社会面 魏の九品中正法→中央政界に進出、貴族形成
魏の屯田制、晋の占田・課田法←農民が土地を失い、流民化
文化面 太平道・五斗米道、儒教はふるわず。老荘思想(竹林の七賢、清談)
解答を書く

 戦略に従って文章にして解答を書きましょう!! 当然、見やすい字で、用紙の使い方に気をつけて、事務的な要求に従って・・・

政治面では2世紀末に黄巾の乱がおこり、豪族が割拠して後漢は220年に滅亡した。その後、魏・蜀・呉の三国時代となったが、魏が蜀を滅ぼし、その魏を魏の部将だった司馬炎が奪って晋を建国したのち、280年に呉を滅ぼして中国を統一した。社会面では、豪族が魏から始まった九品中正法により、中央政界に進出して貴族階級を形成した。農民は政治の混乱から土地を失い、流民と化して、これに対して魏は屯田制、晋は占田・課田法などの土地政策を実施した。文化面では、儒教はふるわず、老荘思想が広がり、竹林の七賢など清談が流行した。また黄巾の乱を起こした太平道や五斗米道など道教の源流が形成された。

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2.学習法
論述問題で求められること

 大学がわざわざ採点が困難な論述対策を出す理由はいろいろあると思いますが、たぶん細かい知識の有無を調べるためではなく、問題の要求を理解し(読解力)、持っている世界史の知識から要求に合うよう思考作業構成して(思考力)、解答という形に文章で表現できる能力(表現力)を見るためだと思います。

 論述で問われるのは
  1.世界史の知識を元に、
  2.問題の主題を読み、それにあわせて自分の持っている知識をもとに、考え・構成し、
  3.自分の言葉で解答として採点官にわかるような文章で表現する
 ことです。

1は教科書レベルの基礎的な知識を把握すること(ガイダンスの学習法を参照)です。2は問題集・過去問で演習(訓練)を多くつむことです。3の文章表現を磨くには人にみてもらう(添削)ことが有効です。

論述の勉強を始める時期は?

 世界史を一通り学習し終えた秋以降に問題集を解いて、上を参考に実際に書いてみてください。世界史を一通り学習し終えて基礎的な知識を学んだ後でないと書けるものも書けません。作文や小論文などが得意な人は、センター試験後に世界史に時間をかけられるならセンター試験後でも間に合いますが、文章表現力に自身がない場合は、秋以降に実際に書いて添削してもらいながら文章表現力をつけていくのがいいと思います。

どんな勉強をしていくか・・・

 論述対策をする前に基礎的な知識をつける勉強(ガイダンスの学習法を参照)をしてください。世界史の知識がないと書けません。

 論述対策はやはり過去問を解くことが効率的な勉強法です。そして論述対策の勉強の目的として大きく2つあります。
  1.論述で問われやすい
テーマを学習すること。
  2.試験本番でどんな問題でも
可能な限り点のある答案を書けるようにすること
です。1については、僕自身HPの
論述対策問題集作成のために主要大学の約10年分の過去問を見ていますと論述で聞かれる部分が結構重複していることに驚きました。また、同じ分野でなくても問題の問われ方、考え方などもにているので過去問から問われやすいテーマを学習することが有効だと思います。論述対策問題集でどんな問題が出てるか一度確認してください。

 2については、実際受験場で目指すのは自分の持っている知識の中から、問題要求にそうように表現し、可能な限り点のある答案を書くことである(参考書等の解答例のようなプロが書く完璧な満点の解答を書くことはかなり難しい)と考え、それには問題演習をこなすことで、問題要求の把握、持っている知識の中から表現することを身につけておくのが望ましいと考えているからです。

論述の勉強法

学習法は1.論述解答へのプロセスで示したように

1.よく読んで解答へのヒントを見つける
 問題文をよく読んで問題の主題
(出題者の要求・課題)、補足事項(地域や時間の制限事項、追加的な要求や使用語句や字数制限などの条件事項)を確認し、文内容に関する隠されたヒントなど出題者のくれた解答へのヒントを読みとり、問題には主題(メイン)と追加事項(サブ、指定語句や、時代や範囲やテーマの限定・規定など)があります。この主題と追加事項をしっかり見極めないと問題とはずれた解答になる場合があります。主題は何かを注意して問題文を読んでください。

2.戦略を立てる
 どんな内容を書くかを考え、どのように表現して書くかの戦略を立てます。戦略の内容は見取り図・簡単なメモで書きます。それをしないで解答を書き始めて、もし途中で重要なことを書き忘れたときに書き直す時間はありません。はじめのうちはあやふやな部分を教科書・参考書などで確認しながらでもいいですが、解答に書くときに教科書・参考書に書いてある通りに丸写しするのはやめましょう。

3.解答を書く
 メモに従って文章を書いていきます。自分の頭では分かっていても案外書けないものです。書く練習をたくさん積んで文章表現能力を付けていきましょう。

4.解答を見る。添削してもらう
 問題集の解答例や教科書・用語集・参考書で内容を確認したり、採点してもらったものを見て、間違いを直し、自分が気づかなかったことやうまい表現などをどんどん吸収していきましょう。論述の解答は解答例とあるように、問題の解答として書く内容に幅があり、書く人ごとに文章表現・構成が違うのでこれが正しい解答というものはありません。解答例の暗記は意味がありません。自分なりの正答を書くという立場で書いてください。

論述の問題集

 論述対策でも過去問を解くのがもっとも効果的な学習法です。ですので河合の「判る!解ける!書ける! 世界史論述」や山川の「詳説世界史論述問題集」やZ会の「段階式 世界史論述のトレーニング」が過去問ベースの問題集で、問題数も多く、解説もしっかりしているので薦めます。これと過去問(東大・京大の青本)、余力・時間があれば論述対策問題集での志望大学の字数や傾向があうものをやればそれで十分です。

出来れば、学校・塾の先生に添削してもらおう

 学校や塾の先生など身近な人に見てもらってください。僕自身添削でいろいろ指摘されながら書けるようになりました。その人のなおした方がいい癖とか文章表現などは添削で解答を見ないとわかりません。当HPでもこのページのやり方(学習法・参考書)で学習をされた人限定ですが添削メールフォームで問題と解答を書き込んでもらえば、添削します。僕はプロでないので無料です。

3.問題文をしっかり読もう!

最大のヒントは問題文にあります。つまり「〜ついて説明せよ」とか「〜ついて比較せよ」と設問の表現から、どのように書けば出題者の意図に沿った解答が書けるかがわかるからです。まずはよく出る設問要求・課題をどう考えて解答に生かすか見ていきましょう。

「経過」・「(王朝などの)変遷」・「展開」

 これは、単に歴史の流れを聞いています。ただ単に流れを書くだけでなく、年代や世紀、王朝など歴史区分を明確に書くことを心がけましょう!! よく、政治史のみ書こうとしている人がいますが、本当に政治史だけでいいのかしっかり設問を読んで検討しましょう。

「説明」

 ある歴史用語や事項をよくわかるように述べる問題です。説明に必要なキーワードは何か考えて、字数に合わせてまとめたり、詳しく書いたりしましょう!!

「理由」、「背景」、「結果」

 その事項が起こった理由(わけ)や背景(事件の裏に関係するもの、背後にあるもの)、結果(どうなったか)など因果関係を問う問題です。

「変化」・「変遷」

 雑誌やCMとかでの育毛やダイエットの広告を思い出してください。使用前と使用後の2枚の写真をみるとその育毛・ダイエット法などの効果による変化がよくわかりますよね。変化を問われる問題での解答はまさにこれが効果的です。「〜から・・・へ」の「〜から」の部分を書くのもお忘れなく!!(ただ、字数制限にもよりますが・・・)

「比較」

 2つ以上の事項を様々な視点から見て、2つ以上の事項の違いや共通点を上げて対比させることです。
例として「うどん」と「ラーメン」を比較してみると・・・

視点 うどん ラーメン
太い・白い 細い・黄色い
つゆ、ス−プ しょうゆ しょうゆ、とんこつ、みそ、塩など様々
どんぶり どんぶり
主な具 ネギ、かまぼこ、あげ ネギ、チャーシュ、メンマ
地域 関西 全国
専門店 ある ある


解答では何と何が比較してるかわかりやすいように書きましょう。

「相違」「違い」

 2つ以上の事項を様々な視点から見て、2つ以上の事項の違いだけを上げて対比させることです。
比較であげたの例では「麺」「つゆ、スープ」・「具」「地域」などが違う部分ですね。

「共通点」

 2つ以上の事項を様々な視点から見て、共通するところを上げることです。
上の例では「
器」・「具にネギを入れている」・「専門店」などが共通する部分ですね。
 比較・相違・共通点を問う入試問題は上の例のようにただ思いつく比較・相違・共通点を上げる作業をさせるためではなく、その作業を通して見えてくる、わかってくるものがあるからこういう作業をさせるのです。そういう
作問者の意図をふまえて何を書くのかを考えましょう

「特色」「特徴」

 たとえば「A君の顔の特徴は?」と聞かれたときにみなさんはどう答えますか? 「目がぱっちりしている」とか「鼻が高い」と言うと思います。この表現をよく考えてください。表現の前に(他の人と比べて・・・)と言う言葉が省略されていませんか? 論述もそうです。他の事項と比べて、その事柄で特に目立っている部分に注意して説明していきましょう。

「影響」

 その事項がその直後の他の事柄にどのような変化や反応などを及ぼしたかということ。
 例「第一次世界大戦の及ぼした影響は?」
  ・東欧で民族自決
  ・アジア・アフリカ諸国での民族運動激化
  ・初の社会主義国家の成立
  ・国際連盟成立・・・

「意義」「歴史的意義」

 現在という視点からその事項を見て他の歴史事件・事項との関連においてもつ価値や重要性を位置づけること。単に意義の事項を挙げるのではなく、いかに意義といえるかをわかるように書くかがポイントです。
 例「第一次世界大戦の意義は?」
  ・戦後の米ソ対立につながる米の台頭、ソ連の成立を準備する
  ・世界初の世界大戦
  ・大戦の経験から戦後の国連につながる国際的な集団安全保障体制が創始された・・・

関係・関連

 関係や関連については、テレビガイド雑誌のドラマ解説によくある登場人物の関係を示した図を思い浮かべてください。仲がいいのか・悪いのか、恋愛関係か・親子関係なのかなどいろんな関係が書いてあります。入試問題では「AとBとの関係に注意して・・・」と書かれています。この場合はAとBとの関係(仲がいいとか悪いとか・・・)も書かなくてはなりません。こういう問題は多くはその関係に変化などがあるのでそこを書かいてほしいというヒントなのです。

留意・注意

 主題に付け加える追加事項をあらわすもので、「〜に注意して・・・」と問題にある場合は「〜」部分を書けという解答の方向をしめすもの、そのことも忘れずの書いてねというヒントなのです。

まとめ・要約・要旨

 史料問題で多い設問ですが、自分の知っている知識だけでなく、史料の重要な内容、作者の主張を把握して、設問と照らしながら書きましょう。ただ「歴史をまとめよ」という設問は「経過」「変遷」「展開」のことですよ。

簡潔に、簡単に

 言葉通りに簡単でないのがこのヒント。わかっているとは思いますが小学生が読んでもわかるようにという意味ではない。複雑・多量の内容を要点を押さえてまとめて短文で書いてねというヒント。指定字数内で設問からどういう部分を残してまとめて書くかが結構難しい。

具体的に

 「具体的に」と書かれた場合は例として歴史事件・事項を織りまぜながら説明していくと言うことで、よく勘違いされるのは具体例だけを書けばいいということです。

出題の意図をよく考えること

 問題を作る場合には必ず「この問題を通してこういうことを分かっているかを問いたい」という意図があります。その意図をつかむことが大事です。前書きや史料や指定語句からもどのような内容を書いてほしいかの作問者の意図がつかめます。2000年の東大の問題はそれに当たるでしょう。よく読み、その意図をつかみましょう!!

指定語句

 指定語句はヒントにもなりますが、語句にないことを書き忘れたり、語句に気を取られて設問要求からずれた解答になってしまうなどワナにもなります。特に初めて書く人は指定語句の説明で字数を取られ、他の必要な要素がない解答になりがちです。指定語句はあくまで解答にその語句を入れて書くということですよ。設問要求を踏まえつつ語句をうまく使いましょう。

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4.学習の注意点
解答用紙の使い方


 いわゆる作文の原稿用紙とはかなり異なりますので注意してください。各大学で若干書式が異なります。解答用紙の注意書きをよく読んでください。

句読点(。や、)やカッコ(「」)や中黒(・)などは一マスに書く。
 右端のマスだからといって、決して下のように一マスに文字と。や、を一緒に書いたり、マスの外に。や、を書かない。つぎの行の冒頭に。や、を書こう!!

る。

冒頭に一マスあけない。段落の改行もしない。

数字は一マスに二文字で書く。

世紀をCと書くなど略字は使わない。
 
ただ、イギリスを英と書くなど常識的な省略はいいようです。

後は問題文・解答文の書いてある注意書きを従い解答する。

マス目のない解答用紙は常識的な字の大きさで!!

制限字数はどれくらいまで書いたらいいか?

 できるだけ、制限字数に近づくように頑張りましょう。

接続語などに注意して、論理を明確に、内容をしっかり書こう!!

 特に因果関係(〜によって)や対比(対して、一方)、理由(〜から)などの接続詞を使い方を間違うと論理が逆になったりします。また単なる用語の並び替え・羅列ではなく内容のある文章を書かないと意味がありませんよ。

内容がある文章で!!

 関係する用語を解答に放り込こむだけ、用語を並べで適当につなぎ合わせて文にしただけで部分点がもらえると考えるのは甘いです。(そんなことを聞くなら採点が大変な論述問題にはしません。)設問の要求に合うように自分が知っている知識を整理し、用語を正しく使用し、文章化することが論述ですよ。

知識のひけらかし、嘘は書かない

 他の受験生の解答と差を付けるために難しいこと、細かいことを書くなど知識のひけらかしをして頑張りすぎるのは問題です。添削しているとこういう受験生が結構多いです。必要な内容が書けなくなる可能性が出て来たりします。解答に必要な知識を書けばいいだけです

 また、間違った内容は減点されるもとです。結構勝手に歴史を作るようなとんでもない間違いの文章を書いていることが多いです。書く練習をするときには必ず間違っていないか教科書・用語集で確認してください。年号などど忘れしても世紀で書くとか論述試験ならうまくごまかせます。減点されない解答を書きましょう。

教科書・問題集をよく読もう!!

 教科書や私大向けの問題集の問題文を何度もよく読んでください。論述を書く上で教科書や問題文の文章の表現が大変参考になります。

論述の問題集、過去問で・・・

 いろんな論述の解答例を見てるとたまに受験生の知らない事や、頑張りすぎて(?)難しい表現を書いていたり、出題要求に答えていない解答が見られますので、「こんな事を書かなくてはいけないのか」とか「この通り書かないとダメなのか」とか思ったりしないでください。論述解答の多くの場合は「解答例」と書いてあります。これは空欄に用語を書き込んだり、マーク選択の解答と違い、答える人によって解答に若干の表現や考えや視点に幅があるからです。論述は採点者がみて、解答者なりの考えや表現で設問要求に答えていると判断するかどうかです。解答例は覚えるのではなく、解答作成者がこの問題で何をなにを考えてこういう解答例になったのか考えたり、どんな内容を書くべきかを考えたり、解答で使われている文章表現などを参考にしてください。

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